秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判 19

第19回 ペナン裁判 (十二) 今井今朝五郎憲兵曹長は群馬県の出身で、軍務に就く前は農業を営んでいた。享年三十歳。今井曹長がペナン憲兵隊で任務に就いていたのは、昭和十八年十月中旬からその年が暮れるまでであった。つまり、ペナンには一月半しかい...
秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判 18

第18回 ペナン裁判 (十一) 清水定夫憲兵曹長は兵庫県出身。享年三十一歳。清水曹長は昭和十九年八月から降伏までの間、ペナン憲兵隊で任に就いていた。その主な任務は、刑務所に勾留中の容疑者を取調べることであった。その取調べの最中に容疑者を殴っ...
秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判 17

第17回 ペナン裁判 (十) 村上誠毅准尉は山口県出身。享年三十二歳。村上准尉も他の英霊と同じく、たいへん優れた遺詠を残している。これらの遺詠が今も人の心を打つのは、散りゆく心に人の誠を見るからである。『世紀の遺書』に載せられている村上准尉...
秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判 16

第16回 ペナン裁判 (九) 小川敬准尉は茨城県出身。享年三十三歳。小川准尉がペナン憲兵隊にいたのは昭和十七年四月から同年六月までの間だけで、その後はタイピン憲兵隊で任務に就いていた。このような短い期間しかペナンにいなかった小川准尉に対する...
秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判 15

第15回 ペナン裁判 (八) 涌井三郎准尉は長野県出身。享年35歳。涌井准尉は昭和十九年二月から降伏までの間、ペナン憲兵隊に勤めていた。その任務は主に本部での事務処理であった。二、三度被疑者の取調べを行ったことはあったが、取り調べを受けた者...
秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判 14

第14回 ペナン裁判 (七) 三浦市蔵准尉は福島県出身、三十八歳で逝った。ペナン憲兵隊には昭和十八年一月から同年九月まで任務に就いていたが、彼の本来の職務は総務であり、取り調べには九月に関わったのみである。そのような三浦准尉にも検察の網はか...
秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判 13

第13回 ペナン裁判 (六) 御民我尽して果てむペナン島 これは和斯倖嗣憲兵曹長の遺詠である。彼はペナン裁判の被告中、起訴対象の全期間3年5か月を勤務した唯一の憲兵であった。しかし、それは残った者として不在者の責任まで負わされることを意味す...
秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判 12

第12回 ペナン裁判 (五) 鎌田准尉は東川少佐と同じ時期にペナンに赴任してきた。共産ゲリラ一斉検挙の際は、警備隊と憲兵隊との間で連絡役を務めたが、その時の取り調べは警備隊が行ったので、鎌田准尉に責任はない。もちろん刑務所内での被疑者の扱い...
秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判 11

第11回 ペナン裁判 (四) これから被告たちについて少し詳しく述べてみたい。ペナン憲兵分隊全体に網がかけられたこの裁判において、弁護人は全体としての調和を図りながら一人ひとりの被告を弁護しなくてはならなかった。弁護人は35人の被告人を4つ...
秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判 10

第10回 ペナン裁判 (三) 前回、日本軍進駐後の占領体制においては、軍政部、警備隊、憲兵隊がそれぞれ行政、守備、治安維持の役割を担っていたことに触れたが、この組織的区分がいかに重要であったかを少し述べたい。 検察は、起訴状に記されている期...