自然災害とマインド・コントロール

西日本の豪雨災害は、改めて治水の重要性を知らしめた。
今すでに洪水はひき、復興に向けて動き出している。しかし、デマ情報の氾濫はまだ続いているようだ。SNSの普及でデマ情報の拡散が容易に起こる世の中である。「レスキュー隊の格好をした窃盗団が被災地に入った」などという悪質きわまるデマもあったようで、警察も注意を促しているようだ。このニュースを聞いて、思い浮かんだことがる。関東大震災の時に流されたデマである。

『悪のマインド・コントロール』の一節に次のような記述がある。

関東大震災での朝鮮人虐殺事件にしても、一種のマインド・コントロールが引き金であった。朝鮮人を虐殺したのは、日本の自警団である。しかし、朝鮮人が震災後の混乱に紛れて井戸に毒を人れて歩いていると言いふらしたのは、実は社会主義者たちであった。朝鮮人虐殺によって、日本の体制にマイナス・イメージを与えようとしたのであった。

当時、日本には労務者としてたくさんの朝鮮人が来ていた。日本語はほとんどわからないし、日本の風俗や習慣に、なじんではいない。そこへ大地震が来て、彼らの飯場にも大混乱が起こった。食糧の備蓄は当然ないから、日本の民家の井戸水で腹をふくらませようとする。集団で避難しているから、何やら徒党を組んでいるように見える。声高に朝鮮語でしゃべっているが意味はわからない。朝鮮料理のニンニクの臭いはする。日本人からすれば、異様な集団に見えたはずである。そこへ、社会主義者がふりまいた流言飛語が流れてくる。デマに躍らされた日本人は、朝鮮人の襲撃に備えて自警団を組織する。そして、襲われないうちに先手をとるつもりで避難して来る朝鮮人を次々に虐殺していったのである。

この時、軍隊が虐殺を逃れた朝鮮人を保護している。自警団に追われた朝鮮人が、二千人、三千人と各地の連隊へ逃げ込んでいる。軍隊は、彼らを二カ月にわたって保護し、日本人の感情が鎖まってから一般社会へ戻したのである。
(『悪のマインド・コントロール』 第四章)

災害直後の混乱の時期に流されるデマが如何に危険か、私たちは肝に銘じておくべきであろう。同時に、誰がどのような目的でデマを流しているのか、明らかにすべきである。関東大震災の時は社会主義者たちが社会を混乱させる目的、つまり革命実現のためにデマを流したのであろう。では、今回は?

いずれにせよ、私たちはデマやマインド・コントロールに対する免疫機能を高めておいたほうがよいだろう。これは反体制や混乱のデマに注意するだけにとどまらず、体制側が災害後に打ち出す「ショック・ドクトリン」にも注意を促したい。簡単な例をあげれば、東日本大震災の後に政府は「復興税」なるものを導入したが、これに国民は簡単に納得させられてしまった。これが「ショック・ドクトリン」、つまり「ショックの後のマインド・コントロール」である。

被災地の早い復興を望むのみである。

九平次拝

コメント