英国人と自由

新型コロナウィルスの感染拡大で、英国は今封鎖状態にある。

チャールズ皇太子、ジョンソン首相、ハンコック保健相も検査で陽性反応が出てしまい、隔離中である。英国政府が外出を禁止しているので、いつもならば混み合うロンドン市街地は今ガラガラの状態である。

さすがの英国人も今回の政府の強権発動には従ってはいる。

しかし、この強権発動に至るまでに英国人が見せた行動は、いかにも英国人らしかった。そしてその姿は、日本軍の捕虜となった英国人たちの姿とも重なるものであった。

英国で新型コロナウィルスの感染が急増しだした時、まず英国政府は集団免疫によってこの難局を乗り切ろうとした。が、イタリアでの惨状が毎日繰り返し報道される中、すぐに方針転換を余儀なくされた。そこで、学校の閉鎖、パブやレストランなどの閉店させるところまで踏み切った。同時に多くの職場もリモート・ワークに切り替えていった。

しかし、ここで英国人気質が大いに発揮されてしまう。

家にいてすることのない英国人は、春の陽気に誘われて外をぶらつき始めたのだ。道に屯して、友人とお喋りを楽しむものも出てきた。全ての人がこういう行動をとるわけではないが、一定の割合で必ずこのような人々は存在する。

これを見かねて、英国政府は不必要な外出を禁止するという強権を発動したのである。つまり、強権を用いなければ、英国人の全員に言うことを聞かせることはできないのである。英国人にとってこれは権利としての「自由」の問題なのだ。

この英国人の「自由」を愛する気質に、第二次大戦中の日本軍も手を焼いていたことはあまり知られていない。

日本軍の捕虜となった英国人には「反抗」のポーズもあったであろうが、「自由」を愛するその性質は、日本軍の指導や命令を聞かぬ者を少なからず生み、たびたび日本軍との間で問題を起こした。

それが原因で伝染病が蔓延したこともあった。例えば、日本軍は川の生水を飲むことを固く禁じていたが、誘惑に負けた英国人はそれを飲んでコレラなどの病気に感染したりしている。また、現地人の物売りや労務者との接触は防疫のために禁じられていたが、英国人はこの日本軍の方針で生じる不便に不満たらたらであった。こっそりと接触する者も当然出てきた。

このような「自由」の民、英国人に効果的な防疫体制を敷くことは至難の業であるということを、今回の新型コロナ騒動を見ながら改めて認識した次第である。

ちなみに、英国人捕虜の間で蔓延した病気の責任は全て日本軍に負わされた。

コメント