悪のマインド・コントロール

『悪のマインド・コントロール』 (旧題『悪の超心理学』)

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昭和58年に刊行された『悪の超心理学』を、『悪のマインド・コントロール』と改題し、デジタル版として復刊した。旧題では「超心理学」を敢えて「マインド・コントロール」と読ませていた。これは、編集者の苦肉の策であったのだろう。

タイトルに超心理学やマインド・コントロールと銘打っているので、『悪の超心理学』は出版当時、随分と白い目で見られたようだ。「オカルト」「トンデモ」とレッテル貼に躍起になる人たちもいた。本書は彼らにとってよほど都合が悪かったのであろう。

本書の著者、倉前は歴とした科学者であり、技術者であり、そして情報の専門家でもあった。先の大戦中、倉前は東北帝国大学の金属材料研究所でレーダーの研究開発にあたっていたが、ご存知の通り日本はレーダー開発でアメリカに遅れをとり、情報戦でも完敗し、敗戦に至った。その責任の一端を感じてか、戦後、倉前は情報の世界に入ってゆく。フルシチョフ時代のソ連を横断旅行し、帰国後ソ連の国情に関する報告書を情報当局に提出した。「Kレポート」として知られたこの報告書を最も高く評価したのは、かのCIAであったという。

倉前は、常識にとらわれない、独自の情報の読み解き方を持っていた。そこには、科学者やエンジニアというだけでなく、シナリオライター、歌人としての発想力が働いていた。いくら多くの情報を集め科学的に分析しようとも、絵を描けなければ未来を予測することはできない。そこでシナリオを書く能力が役に立った。倉前の数々の予測はこのようにして生まれ、ソ連のアフガン侵攻や、ソ連崩壊などを的中させた。

自由な発想を持つ倉前は、兵器としてのマインド・コントロールの恐ろしさに逸早く気づき、警鐘を鳴らすために本書を書いた。だから、本書の中には「超能力」や「テレパシー」といった言葉が普通に登場する。これを、SF小説やスパイ小説として笑うものもいるだろう。しかし、まだ解明されていないにせよ、何らかの現象が確認されている以上、そこに踏み込んで行き、自らこれを解明しようとするのが科学者のとるべき姿勢であろう。倉前はそれを行ったに過ぎない。

事実、欧米や旧ソ連の大学に超心理学の研究機関があり、超能力と言われるものが科学的に研究されてきたことは事実である。未知のものを解明し、法則化し、実世界に応用するのが科学の役割であるのだから、当然といえば当然である。また、アメリカの情報機関や軍には、いわゆる超能力部隊のようなものがある事はよく知られている。それは旧ソ連についても同様である。超能力やマインド・コントロールを軍事利用できれば、世にも恐ろしい兵器となるのは目に見えているが、その真相は結局のところわからない。

しかし、この30年の間に、「マインド・コントロール」や「洗脳」に関しては一般の間にかなり理解が進んできたのではないか。今や、これらの効果を疑う者はほとんどいないだろう。オウム事件が一つの大きな契機となったのは事実だ。加えて、テレビをはじめとする大マスコミが度々行ってきた「印象操作」や「サブリミナル」的な製作もマインド・コントロールの一環であったと、今や大衆が気づき始めている。そして、戦後のGHQの施策もこれと無関係ではなかったと、日本人はようやく気づき始めた。

また最近では、テレパシーは存在すると主張する科学者も出てくるようになった。武田邦彦教授である。武田教授は、海の中で何万もの魚の大群が一糸乱れず泳ぐためにはテレパシーが必要であると主張する。海中では音波に乗る声は通じないから、それ以外に何らかの意思疎通のメカニズムが発達したのであろう。結局のところ、言語を発達させ、それに頼りきっているヒトには感知できない意思疎通のメカニズムが動物には存在するのではないか。可視光線以外の光をヒトは見ることができないのと同様に。空気の無い宇宙空間で宇宙飛行士が不思議な体験をするのも、これと関係があるかもしれない。

人間を含めた動物の脳は不思議な力を持つ。今後もこの分野の研究が大いに進展することに期待したい。

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