新 悪の論理

新 悪の論理 日本の地政学はこれだ

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前著『悪の論理』の続編として昭和55年に刊行された。ソ連によるアフガニスタン侵攻を予測し的中させたこともあり、前著に続いてベストセラーとなった。

前著の副題は「地政学とは何か」であり、前著はまさしく地政学の入門書であった。そして、倉前が「悪の論理」と呼ぶ「地政学」はなぜ必要なのか、前著ではわかりやすく解説している。

それに比べると、本書『新 悪の論理』は、より専門的だといえる。しかし、難しいことを言っている訳ではない。「難しいことも易しい言葉で伝える」、この文章の基本を倉前は常に心がけていたからだ。昔、倉前が福田恆存氏の対談番組に出演した際、福田氏から「倉前さんの文章には勢いがある」と褒められたらしく、帰宅後、倉前はご機嫌だったそうだ。当代随一の文章の大家から自分の文章を褒められたのだから、当然と言えば当然だが。倉前の文章の「わかりやすさ」と「勢い」は、やはり関連性があると思う。

それはさておき、『新 悪の論理』の内容は次のようなものだ。

第一章 中東分割のシナリオ 米ソ戦略の激突
第二章 インド洋の地政学
第三章 東南アジアの地政学
第四章 南太平洋の地政学
第五章 シベリア開発の地政学
第六章 北氷洋の地政学
第七章 北東アジアの地政学
第八章 米日中軍事同盟の虚構と陥穽
第九章 宗教と文化の地政学
第十章 日本の新地政学

北米や欧州といった地域が見当たらないので、物足りなさを感じられるかもしれない。しかし、本書を読めばおわかりいただけるが、上記の地域は「冷戦」における「主戦場」ともいえる地域で、米国、ソ連、そして各地域大国が国益を求めてしのぎを削っていたところである。これらの地域を知らずして、国際情勢は語れないのである。北米、欧州、そして国連などの外交の舞台では「いい格好」をする大国たちも、上記の地域では本音をあまり隠さずにぶつかりあっていた。だから代理戦争なるものも起こった。

世界の大国がどういう行動をとるか、その行動パターンはこの『悪の論理』『新 悪の論理』を読んでいただければ、だいたいは理解していただけるだろう。地政学の基本さえわかれば、国際情勢を読み解く上で何も難しい理屈など必要ないのである。

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