倉前麻須美 著
第17回 昨日の敵は
卵のお年玉に続いて、今度は私がびっくりすることがおきました。バトル相手のおばさんが私においでおいでをするのです。「怖いからいやだ」と拒否する私に「怖いことしないからこっちに来てちょうだい。お話があるの」と言うではありませんか。そして、隣に私を座らせて、おばさんはこう言いました。この会話は今でもはっきり覚えています。
「あんたね、去年おばさんにバイバイしてくれたでしょう」
「うんしたよ」と私。
「おばさんはね、あれがとってもうれしかったのよ」
私は「へっ、あんなことで?」とびっくりして拍子抜けです。
「今までごめんね。これからは仲良くしてね」
そこまで言われたら私も謝るしかないではありませんか。
「私もごめんね」と謝りました。
それからの入院生活はとても楽しいものになりました。おばさんが大学生の息子さんを呼んで、私を遊園地や動物園に連れて行くよう頼んでくれたのです。お兄さんも優しい人で本当に楽しかった思い出になっています。おばさんも、お祖母さんが孫に接するようにかまってくれて、ベタベタ状態でした。
こうして私は入院生活を気持ちよく送っていましたが、思いがけず退院が早まり、慣れ親しんだ病院の皆さんとお別れになってしまいました。(つづく)
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