倉前麻須美 著
第14回 今度は私が入院
あやめ池の家で過ごした期間は、振り返ってみれば本当に短いものでした。一年いたかどうかといったところです。それでも、私にとって忘れらないことが起こりました。小学校の健康診断の結果に何か問題があり、私は先生から「ご両親に必ず渡してね」と手紙を預かりました。それを読んだ両親は、翌日、私を連れて京都に向かいました。向かった先は、母のお兄さんである伯父さんが勤めている大きな病院でした。父母と伯父さんが話し合っている間、私は離れた場所で待たされていたのですが、ようやく話し合いが終わると、私はそのまま入院すると聞かされ、このような展開にただただ驚くばかりでした。
私の担当になる小柄で優しい美人の女医さんを、伯父さんから紹介されました。そして、部屋も四人部屋に決まり、挨拶を済ませた後、両親は私が退屈しないようにと『少女クラブ』など私の好きな漫画を買ってくれました。それがとても嬉しくて、私はその時に両親とした約束、痛くても泣かないという約束を守る気満々で、とても張り切っていたのをよく覚えています。
ただ、ひとつ悩みの種がありました。相部屋の初老の女の人が苦手だったのです。ちっとも笑わない人でジロリと冷たい目で見るだけなので、子供が嫌いなんだなと思っていました。(つづく)
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