没後三十年企画『日本「匠」の伝統』16

倉前盛通 著 

第16回 日本人の道

日本人の特徴に、何でも「道」にするというのがあります。柔術が柔道に、剣術が剣道になりました。お花とか茶湯を華道、茶道と呼び、香りを扱う香道というのもあります。商いを商道といったりもしますし、農民道とか職人道とかいう人もおります。何にでも「道」をつけたがるわけなのです。

しかし、「道」にも意味があります。祭りに奉仕している時、もしくは、そういう意識が深層心理にあるような時、言い換えるならば、非常に高い目的を持ち、理想を持って精進している時に「道」をつけるのです。そうしないと、気分が落ち着かないということがあるのです。

今世界で日本の総合商社が頑張っていますが、非常に薄利多売で、利益は少ないわけです。ほんの少ししか利益は取らないのです。しかし、一所懸命に働いています。商いの量が多いので相当な利益をあげるのですが。

私は随分世界各地を廻って、あちこちの総合商社にお世話になりましたが、本当に世界の辺鄙なところに行って一所懸命やっています。その姿を見ると、何のためにこんなに一所懸命になっているのだろうと思いますが、これはやはり一種の商人道なのでしょう。それに生き甲斐を感じているわけです。やはり共同体の祭りに参加しているという感じです。

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