倉前麻須美 著
第13回 弟とのお別れ
父の設計で建てた家は、今でもありありと記憶に残っています。日当たりのいい南側に白くペンキを塗ったテラスがあり、柵も同じく白く塗装されていました。東側に玄関がある、平屋の可愛い家でした。
父と母が庭造りをしている時、弟坊やは付かず離れず、周りを歩いていました。たまに遠くに行こうとすると急いで連れ戻したりして、坊やにとっては伸び伸びと過ごせた時でした。
しかし、ある日学校から帰宅すると、坊やの姿が見えません。どうしたのか母に聞くと坊やのように体の弱い人の世話をしてくれる施設が見つかり、そこに入れてもらったとのことでした。「時々、顔を見に行こうね」と母は寂しげに言いました。坊やの方が体格がよくなって、私のいうこと聞いてくれなくなったこともあり、働きに出たい母と父はこれが最善策と考えたのでしょう。
この時の苦悩を父母は文章にしました。それが私たちの将来を大きく変えていくことになるのです。
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