倉前麻須美 著
第21回 楽しい団欒の時
富雄の家に引っ越した頃から、大阪のおばさんの紹介で四国から悦子お姉さんがずっと泊まり込みで来てくれました。このお姉さんのおかげで、両親が留守でもとても心強かったです。
ある日学校から帰ると、富雄の家の前は少し坂になっているため、母が庭で小躍りしている姿が見えました。「何を喜んでいるの?」と聞くと、書いた文章が入選したと言うことでした。でもどんな文章なのかすぐには見せてくれませんでしたし、それがどれ程のことか子供にはよくわかりませんでした。ただ、これを機に母は大阪へ行くことが多くなり、夜遅くに父と一緒に帰宅するという日が増えてきました。ですから、悦子お姉さんがいてくれたことが私にはとても心強く感じられたのでした。
ここ富雄で一才の誕生日を迎えた弟が早速歩き始めました。目が離せなくて悦子お姉さんも大変だったろうなと思います。また、この家で父母はテレビを買いました。相撲の中継で初代若乃花や朝潮の取り組みを見ては、家族皆で掛け声をかけて応援するほどで、とても面白かった思い出があります。当時、テレビは今のように買いやすい代物ではなかった時代で、テレビの面白さにみんなが夢中になっていました。
当時はテレビ、冷蔵庫、洗濯機が三種の神器と呼ばれていた時代で、とても貴重な我が家の三種の神器は後年、遠く宮崎にまで運ばれることになるのでした。(つづく)
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