倉前盛通 著
第17回 祭祀と鉢巻
御神輿を担ぐ時に、よく鉢巻をします。ねじり鉢巻をして向こう鉢巻にします。実は、鉢巻を前で結ぶのと後ろで結ぶのでは、意味合いが全く違ってくるのです。ねじり鉢巻で前で結んだり、横っちょで結んだりする時、その人は神に仕えているのです。ですから、神輿を担ぐ人はねじり鉢巻でも構わないのであります、その方が威勢がいいのもありますが。時代劇の捕物で御用だ御用だと言っている捕手の人たちも大抵、前鉢巻をしています。仕える立場と身をわきまえているのでしょう。
ところが、自分が祭祀の中心になって、神主みたいな立場に立って、祭りを主催するような場合、後ろ鉢巻になります。これは、鉢巻をしっかり結んで締めるわけであり、神霊を、神様の霊を自分の中に結び込んで、出て行かないようにする、という意味があるのです。そうすることにより、神と人とを繋ぎ、つまりは神様に乗り移ってもらって祭りを行うのです。ですから、そのような立場に立った場合は後ろ鉢巻になるわけです。
仇討ちをする時は後ろ鉢巻で仇討ちをします。親の仇を討つのですから、先祖の神霊に乗り移ってもらって祖先の霊と一緒に討たなければならないのです。つまり、自分には祖先の神々の霊が乗り移っているんだと思って闘わなければならないのです。だから後ろ鉢巻は当然のことになるでしょう。
職人たちが働く時は大抵、前鉢巻、ねじり鉢巻です。職人は神に仕えて働いているわけです。しかし、職人を率いて仕事をする場合、つまり中心的な人間、指導的な人間というのは後ろ鉢巻でないと困ります。使われている人は前鉢巻でいいということになるでしょう。
鉢巻の締め方にもこのような差があるということは、あまり知らなかったのですが、最近、そういうことを人から聞きまして、なるほど、そいうこともあるのかと思った次第です。
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