倉前盛通 著
第7回 シンボルと日本人
次に、日本人の特徴である、シンボルを操作する能力について述べたいと思います。日本人はシンボル操作能力が非常に高いのですが、なぜ高いのか。例えば、小学二年生ぐらいまでに九九を覚えます。これは数字記号を操って暗算するということです。世界で一番暗算が上手いのは日本人であります。その九九ですが、これは十歳以下で教えないと駄目なのです。そうしないと条件反射として脳に定着しません。二十歳ぐらいになってから九九を教えても覚えられないのです。脳が固くなっていますから。つまり、数字記号を軽く操るような、そういう脳の組織が発達するのは、小学校の二、三年の歳で、それは十歳以下で発達が終わります。
ですから、日本はすでに室町時代の頃から、江戸時代になれば寺子屋を通じで、ずっと十歳以下で九九を教えていたのです。明治維新の時には青年男子の四〇パーセントが読み書きができていたと言われております。女の人は二〇パーセント位が読み書きできていたそうですが、女性は特にそろばんが上手かったそうであります。一家の主婦がほとんどそろばんを握っていたのです。
昔から日本はおかみさんが財布の紐を握っているのです。大名だってそうでした。大名が威張っておっても財布の紐は奥方が握っていました。ですから大名の奥方のことを政所様と呼んでいました。政所というのは大蔵省の様なもので、大名の奥様を大蔵大臣様と呼んでいた訳です。ですから、大名といえども奥方には頭が上がらない。今の日本でも大体そうであります。月給袋は全部奥さんに渡すというのは、世界で日本だけであって、他の国ではそういうことは考えられないようです。これもどういうわけか、日本の不思議なところであります。
伊勢神宮が女性の神様をお祀りし、女神が日本で最も尊い神様になっているわけですが、そのような国は世界に見当たらないのではないでしょうか。天に坐します父なる神よと大体は言うわけで、偉い神様は男性になっています。日本ではそれが女性になっているということは、日本の在り方を思うときに大変おもしろいことであると、私は思います。
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