濡衣で処刑されたある軍属の遺書

秘録 BC級戦犯裁判

秘録 BC級戦犯裁判

第34回 ポートブレア編(13)

今回は、35歳でシンガポール・チャンギーの刑場の露と消えた小島武治氏の遺書をご紹介したい。以下、『世紀の遺書』からの抜粋である。

遺書

母上

長い間色々御面倒ばかりおかけしまして何一つ孝養も尽さず先立つ事申訳なし。何卒お許し下さい。此度のこと総て運命と思ひ今は誰も怨まず悲しまずお国のために笑つて参ります。どうか何時迄もお元気でお暮しの程お祈り致します。

○○殿

長い間色々御骨折をかけて今又様々御苦労をかけ様とは思ひませんでした。五人の子供達を残してこれから先の棘の道を歩まなければならぬお前の事を思ふと言ふ言葉もありませんが、どうか子供達を立派に教育してお国に役立つ人になる様お願ひします。身の振り方に就いてはよく母上と相談してください。どうか何時迄も元気で暮して呉れる様祈つて居ります。

○○、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇殿

父はお国のために働いて今敗戦と言ふ大変時の中に戦犯人として死んで参ります。お前達は〇〇を中心として姉弟仲良く母に孝養をつくし勉強して役立つ人になつて下さい。父はお前達を必ず見守つてゐるから悲しがらず安心して大きくなつて下さい。

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