第27回 ポートブレア編(6)
今回は粟國良助海軍機関兵長の遺書をご紹介しよう。以下、『世紀の遺書』からの抜粋。
遺書
長年大変にお世話になりました。厚く御礼申上げます。私も応召以来常に軍務に精励せしつもりで居りました。この度シンガポールに於いて死刑を宣告され再び内地の土を踏む事はありません。誠に御手数乍ら家族からの音信永らく不通の為どんな状態であるか分りません故叔父上から宜しく御伝言下さい。
私の死に到りたる詳細は湯沢主計大尉(元内務大臣湯沢三千男の三男)又は熊本市二本木町五丁目吉岡富雄及び中原純雄の三人の方からお聞き下さい。
自分は皇国の為に立派に働いて死んで行くのでありますから悲報が届いても決して力落しのない様、又個人的な破廉恥罪で刑を受けたのではない事だけは、どうか確信していただきたいと思います。
母上宛
其後御元気の事と思います。生れて三十年余り何から何までお世話を戴きましたが今迄孝行らしい事も出来得ず、之からでもお母さんに安心して戴かうと思つて考へて居りましたのですが、不幸こんな結果になつて了つた事を幾重にもお詫び申上げます。
どうぞ末長くお幸せにてお暮し下さいます様祈つて居ります。
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