英国陸軍の元帥でもあった天皇陛下

ピゴット少将祝辞 日英関係
ピゴット少将祝辞

昭和12(1937)年1月7日、在東京英国大使館附武官ピゴット少将は、寺内陸軍大臣宛の書簡で帝国陸軍への年賀の祝意を表したが、興味深いのは、それに添えられていた昭和天皇への祝意の文面である。それは以下の通りである。

英国陸軍の元帥であらせらるる、天皇陛下に対し英国陸軍将兵一同より謹で年頭の御挨拶を閣下より御奏上下さることを訓令に基てお願ひ致します

事情を知らなければ、「英国陸軍の元帥であらせらるる天皇陛下」という表現は翻訳の間違えでないかと思うかもしれない。では、英文を見てみよう。

Further, in accordance with my instructions, I beg that Your Excellency will convey to His Imperial Majesty The Emperor, as Field Marshal in the British Army, the respectful New Year Greeting of the officers and other ranks of the British Army.

英文でもしっかりと「His Imperial Majesty The Emperor, as Field Marshal in the British Army」となっており、翻訳は間違っていない。つまり、大東亜戦争で戦うこととなった英国陸軍と昭和天皇の間には、このような不思議な関係が確かに存在したのである。

これは一体どういうことであろうか。親日家のピゴット少将が勢い余って勝手にしたことであろうか。確かに、ピゴット少将がことの経緯に深く関与していることは事実だが、これは少将が勝手にできる類のものではなく、実は英国王ジョージ5世から大正天皇に正式に送られた称号なのである。

ことの経緯はこうである。第一次世界大戦で日英間に溝ができ始めた大正6年(1917)年秋、それを危惧したピゴットが、ジョージ5世から大正天皇に英陸軍の元帥杖を送ったらどうかと英軍上層部に提案したところ、その提案を知ったバルフォア外相が殊の外乗り気でとんとん拍子で実現したのである。その背景には、日本にシベリア出兵をさせたい英国の政治的思惑もあった。そして、大正7年(1918)年6月、その元帥杖を届けるため、ジョージ5世の弟君コノート公アーサー殿下が来日したのである。

昭和天皇も大正天皇からこの英陸軍の元帥杖をお受け継ぎになり、形式上は英国陸軍の元帥でいらっしゃったのである。形式を重んじる軍人がこれを無視するわけがなく、昭和12(1937)年、親日家の駐在武官ピゴット少将は上記のようなメッセージを天皇陛下に送ったのである。

日英関係が悪化の一途を辿る時期にもこのような交流があったことは、もっと広く知られていてもよいと思う。

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