7月1日、中国共産党の創立100年の式典が北京の天安門広場で大々的に行われた。100年前に現在の中国共産党の隆盛を予言した人はいたであろうか。ここまで中国共産党が勢力を伸ばせたのは、彼らが「砕氷船のテーゼ」に徹してきたのが大きな理由であろう。
「砕氷船のテーゼ」は倉前盛通の『悪の論理』で詳しく説明されているが、簡単に言えば、困難な道を誰か他の者に先に行かせ、最後、その者が疲れたところを背後から襲い、一番おいしいところをいただいてしまおうという戦略のことである。
支那事変から第二次大戦にかけては日本軍が、大戦後は国民党軍がこのような戦略の前にしてやられた。
そして冷戦後、この戦法にまんまと引っかかったのが、資本主義経済であろう。資本主義経済は自由な経済活動、自由な市場が基本である。つまり、「自由」の理念が最低限必要な制度で、これをバランスよく維持するための努力を続けていかなければならない。自由がなければ制度自体が存在しないが、全く制限のない自由でもそれはうまく機能しない。政府は状況に合わせて、市場に介入したり、規制を設けたりするが、基本的には民間の自由な経済活動を妨げてばならない。
このように、長い間、いろいろ試行錯誤をしながら発展を続けてきた資本主義経済が、そのような努力を一切してこなかった全体主義国家によって牛耳られるという事態が、近年生じてしまった。その全体主義国家とは、中国共産党のことである。国家の上に立つ共産党が全てを支配する国、中国が資本主義経済に参入し、「自由の義務」を果たさずに「自由経済」のおいしいところだけを享受してきた。
しかも、「天」の思想を持つ中国は、「天」によって統治を委託された「天子」が独裁で国家を統治する伝統を持つ。進む方向が「自由」とは正反対なのである。その結果、中国共産党は資本主義世界の根本理念である「自由」を蔑ろにし、傷つけてきた。今、資本主義経済は危機に瀕していると言ってよいかもしれない。
自由を認めない独裁国家が自由の恩恵を最も得るという現状は、もはや、冗談を通り越して喜劇である。そして、それを可能にしてしまったのは、資本主義ではなく、資本主義と拝金主義を取り違えた守銭奴たちである。
昔、孔子は商を賤しいものとしたが、これは古代中国に拝金主義が蔓延っていたからであろう。しかし、これは日本の伝統ではない。海洋通商国家の志を忘れ、大陸の独裁主義、拝金主義に媚を売ることなどしてはならない。
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