黒海の地政学2

オランダ海軍エヴァーツェンの近くを飛行するロシア軍機 国際ニュース
オランダ海軍エヴァーツェンの近くを飛行するロシア軍機

先日、黒海において英海軍駆逐艦ディフェンダーがロシア海軍・空軍によって威嚇を受けたとお伝えしたが、今回はその続報となる。この件の背景には、どうも、米国をはじめとする西側によるクリミア奪還の意志が見え隠れするようだ。

ロシアの言い分は、クリミア半島はすでにロシアの一部であるから、駆逐艦ディフェンダーが航行したのはロシアの領海である、というものだ。一方、英国は、そもそもそこは国際法の下ではウクライナの領海でありロシアのものではない、というものだ。確かにロシアによるクリミア併合を国際社会は認めたわけではない。つまり、事実上のロシア領海であるが、国際法的にはウクライナ領海というわけだ。

そして、今回西側は「その水域はウクライナ領海である」という実績作りのために敢えて、このような挑発とも取れる行動を取ったのであろう。しかし、ロシアもここで引くわけにはいかない。引けば、ウクライナ領海であると認めることと同じである。

この小さな事件の裏にはかなり大きな力が働いている。

実は、英海軍に味方が現れた。オランダ海軍である。英空母打撃群に参加しているオランダ海軍のフリゲート艦エヴァーツェンが同じ海域にいて、これもロシア空軍機によって威嚇を受けたと発表したのである。注目すべきは、インド太平洋に向かっていて現在は地中海にある英空母打撃群の二つの主要な艦船が、わざわざクリミアまで出向き、問題の水域に接近もしくは入ったことである。しかも、英国とオランダの二カ国である。

その英空母打撃群には米海軍の駆逐艦も参加しているのであるから、これはもう事実上、米国の意志を表しているのと同じである。ロシアのプーチン大統領も、事件当時ギリシャかクレタのNATOの基地から米軍の偵察機が飛来してきていたとコメントしている。

話をまとめると、今回の件は英海軍の単独行動などではなく、有志の西側諸国の連携のもとに行われたクリミア奪還へ向けた一手であったということだ。これがどのような結末を迎えるか、注目していきたい。

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