6月15日の英海軍の発表によると、空母クイーン・エリザベスを中核とする英空母打撃群が、地中海において共同軍事演習ファルコン・ストライク21に参加したという。
英海軍の発表によると、4カ国のF35が同時に訓練に参加したされているのだが、この発表には少し奇妙なところがある。英海軍の公式サイトによるリリースでは、この4カ国のうちの1カ国の名前が出てこないのである。
もともと英空母クイーン・エリザベスには、英空軍のF35Bと米海兵隊のF35Bが艦載されているので、残りは2カ国である。そのうちの一つはイタリア空軍のF35と英海軍の発表には明確に記されているのだが、もう一つがどうしても見当たらない。そこでいろいろ調べてみた。
それでわかったことは、ファルコン・ストライク21に参加しているもう一つの国はイスラエルであった。イスラエル空軍もF35をこの共同訓練に派遣していたのである。
問題は、なぜこの事実が英海軍の発表では伏せられていたのかである。
一つ考えられるのは、最近のイスラエル・パレスチナ情勢の悪化のため、反イスラエル勢力を刺激しないよう配慮した可能性である。この空母打撃群はスエズ運河を通って紅海を抜けなければならない。つまり、そこを通過中は籠の中の鳥も同然だ。
もう一つの可能性は、イランの存在である。反イスラエル勢力といってもいろいろあるが、その中で最も強大なのがイランである。一見すると、イランは紅海からは離れているように思われるが、実は紅海の出口にあたるバブ・エル・マンデブ海峡のアラビア半島側にはイエメンがあり、ここにはイランの影響力が及んでいるのである。
現在、イエメンは内戦状態にあり、その反政府勢力は親イランのフーシ派である。また、第4次中東戦争の際には、イスラエル向けの石油を止めるため、イエメンがここを海上封鎖した歴史もある。つまり、この海峡は地政学上のチョークポイントであり、その目の前で親イラン勢力がイエメン政府と内戦中なのである。そこを英空母打撃群は通過しなくてはならないのだ。
海峡のアフリカ側はジブチであり、ここにはフランスや米国をはじめ日本も部隊を展開して、安全確保に務めてはいる。しかしそれは、このポイントが置かれた状況が不安定であることの裏返しでもある。この難関を英空母打撃群が通過するとき、イスラエル空軍と共同軍事演習を行なったことなどはあまり周囲に知られたくないと思うのは、無理ないことかもしれない。
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