英国のインド太平洋戦略

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英国空母打撃群のインド・太平洋派遣により、英国のこの地域への関与政策が目に見える形で明らかとなったが、今年3月に発表された英国政府の国家戦略『Global Britain in a competitive age (競争時代におけるグローバルな英国)』の中でも明確に示されている。その中で次のように述べられている。

The Indo-Pacific region matters to the UK: it is critical to our economy, our security and our global ambition to support open societies.(インド太平洋地域は英国にとって重要である。われわれの経済、安全保障、そして開かれた社会を支えるという地球規模的な大望にとって極めて重要なのである。)

そして、「われわれの経済機会、安全保障、価値観のために、より深くこの地域に関与する必要がある」としている。ただ、安全保障、価値観と謳いながらも、それは海洋通商国家としてのそれで、結局は経済に絡んでくる。安全保障の項目では次のように述べられている。

Much of the UK’s trade with Asia depends on shipping that goes through a range of Indo-Pacific choke points. Preserving freedom of navigation is therefore essential to the UK’s national interests. We already work closely with regional partners and will do more through persistent engagement by our armed forces and our wider security capacity-building.(英国のアジア貿易の多くはインド太平洋の戦略的要衝を通過する船舶輸送に依存している。それゆえ、航行の自由を保全することは英国の国益に不可欠である。われわれは既に地域のパートナーたちと緊密に連携しており、さらなる活動を、われわれの軍事力とより広範な安全保障能力の構築による一貫した関与政策を通じて行う。)

さらに、価値観の項目でもこう述べている。

we need to deepen and expand our partnerships to promote open societies and to uphold the international rules and norms that underpin free trade, security and stability. (開かれた社会を促進し、自由貿易や安全保障、安定を支える国際的なルールや規範を維持するために、われわれはパートナーシップを深め、広げる必要がある。)

これが、地政学でいうところの「海洋国家」が持つ典型的な思考パターンである。閉鎖的、独裁的な「大陸国家」とは根本的に相容れないのである。そもそも国際法というものは、海上のルール作りから始まったと言ってよい。海に出たことのない国や民族にこれは理解できまい。

戦後70年以上経ってようやく、英国も本来の海洋国家としての姿を取り戻しつつある。英国がEUを離脱したように、いい加減日本も大陸依存の脱却を考えたらどうであろうか。倉前盛通はあれほど、大陸には深入りするなと警告していたのだが。

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