秘録 BC級戦犯裁判 48

靖國神社灯籠 秘録 BC級戦犯裁判
靖國神社灯籠

第48回 ポートブレア編(27)

今回は、黒澤貞男氏の遺書をご紹介したい。黒澤氏は元農業、陸軍伍長であった。享年二十八歳。

遺言
父上、母上宛
二十八年の長い間色々お世話になり本当に有難う御座いました。御恩報じもせず先立つ罪何卒御赦し下さい。今度の件は御国の為に苦しい戦いを続けて来たものですから食糧方面の逼迫は想像以上のものでした。其の為切りつめた生活を軍にも住民にも等しく分け合つて貰つたのですが不幸敗戦の結果色々の怨みの的となつて仕舞ひ処刑されることとなりました。信念に従つて行動を取り其の為に処分を受けるのであるから本当に安心して笑つて行けます。どうか嘆かずに運命と思つて諦めて戴きます。直きに又生れ替つて参りますから。それでは父上母上お元気で何時迄もお暮し下さい。
 親戚御一同様によろしくお伝へ下さい。

 常夏の海はろばろと聞きませば大和島根の父母痛まむ

黒澤氏の遺書にもあるように、当時現地の食糧事情はかなり逼迫していた。それで現地人による盗が後をたたなかったのである。心情は理解できるが、盗みを見逃すことなどできず、当然犯人は処罰される。それで怨みを買ったのである。そして怨みを持つものが検察証人となってあることないこと証言したのである。戦犯裁判とはこのような裁判であった。

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