生誕百年記念連載『父と私 倉前盛通伝』5

西大寺 父と私 倉前盛通伝

倉前麻須美 著 

第5回 光の帯

幼い私は尼ヶ辻の家で不思議な体験もしました。少し長くなりますが、お付き合いください。

尼ヶ辻の間取りは板の間の隣が六畳の座敷、その隣が3畳の納戸、長い廊下、座敷の壁側にさび朱色の大黒柱がありました。その右横に床の間、左横に違い棚があり、私はいつも大黒柱の傍で寝ていました。ある夜のこと、私には珍しく、真夜中に目が覚めてしまいました。すると、いつも閉まっている納戸の唐紙が少し空いているのに気づきました。川の字になって寝ている両親は熟睡中。怖がりな私には、一人で唐紙を閉めに行く勇気はありません。寝ようと思っても何故か目が冴えてしまって眠れません。こうして、気になる納戸の方ばかり眺めていたら、真っ暗な唐紙の隙間からピカピカ光るものが出てきたのです。それは細長く宙に浮かんでいて、座敷の左側の納戸から右側の大黒柱の傍にいる私の所まで、真っすぐにやってきました。そして寝ている私の真上でピタッと止まったのです。

じっと眺めていたら、銀白色に光ってとてもきれいだとわかりました。渦巻模様が見えたり、蓮の花が見えたり、唐草模様が見えたりしました。納戸の中から帯のように長く伸びて、私の真上まで来ているのです。こんな綺麗なおもちゃがほしいと手を伸ばしましたが、もちろん届きません。私は、ない知恵を絞り、足ならば届くだろうと足を伸ばしてみました。当時の私は背中をあけるのが怖くて、いつも壁にぴったりと背中をくっつけているほどでしたが、この時も布団が背中についていれば安心だったのです。伸ばした足で取れたと思った瞬間、その足にサーッと風が吹き、あたりは真っ暗闇になりました。何故消えたのか訳がわからずに私がキョトンとしていたら、その光の帯がまた現れたのです。(つづく)

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