米軍、アフガン撤退を開始

アフガニスタンに駐留している米軍とNATO軍が正式に撤退を開始したという。9月11日までに完了するということだが、その日は9・11同時多発テロから20年の象徴的な日である。

この動きを見てつくづく思うことは、アフガンの地政学的な重要性とアフガン兵士たちの頑強さである。タリバンはついに、この二十年間、米軍とNATO軍に屈することはなかった。アフガンの歴史を知る者は二十年前、これをすでに予言していた。19世紀と20世紀の超大国、英国とソ連がこの地を諦めざるを得なかったことは、中央アジアの軍事史では常識である。21世紀、米国もやはり同じ道を辿るのではないか、そんな懸念がとうとう現実のものとなった。

それにしても、英国もソ連も米国も、なぜかくもアフガンにこだわったのか。

単純に、地政学上の要衝だからである。中東からインドへ抜ける回廊と中央アジアからアラビア海へ抜ける回廊が交差するのがこのアフガンという土地である。英国と帝政ロシアが中央アジアの覇権を争ったのはこれが要因である。そして、このグレートゲームを優位に進めるために英国は日本と同盟を結び、ロシアを挟み撃ちにした。英国がゲームに勝利したかに見えたが、結局アフガンの人々を屈服させることはできなかった。時代は下り、1970年代、今度はソ連がアフガンでクーデターをおこし、侵攻したが、結局は撤退を余儀なくされた。その時の火種が2001年のテロ、そしてその後のアフガン戦争へとつながるのだが、米軍も結局撤退。歴史は繰り返すこととなった。

地政学上の要衝だからこそ、古来から戦乱の絶えない土地となり、その結果、現地の戦士は強靭さを身につけたのであろう。倉前盛通の言葉を借りるならば、これこそが「悪」というべきものである。「悪」は「しぶとく強靭」という意味である。倉前の『悪の論理』が脚光を浴びた理由の一つにソ連のアフガン侵攻を予言したことが挙げられるが、なんという因縁であろうか。

「悪」のアフガニスタンが今後どのような道を辿るのか注目される。

コメント

タイトルとURLをコピーしました