蒋介石の背後に宋美齢 その2

10 May Telegram from Nanking to London 2 日英関係
10 May Telegram from Nanking to London 2

ナッチブル・ヒューゲッセン英大使との会談で、宋美齢は次のように述べた。これは、蒋介石の言葉の通訳ではなく、彼女自身の言葉として大使は英本国に報告している。

Madame Chiang Kai-shek carried the point rather further by observing that China placed greater reliance on H.K. Government than any other Power and, now that mutual confidence and relations were so close, would it not be desirable to translate these sentiments “into something permanent”?

蒋介石夫人はもう少し踏み込んで、次のように述べた。中国は他のどんな列強よりも英国政府を頼りにしている。今や、相互の信頼と関係はとても緊密であるので、この所感を「恒久的な何か」に書き表すのが望ましくはありませんか。

ナッチブル・ヒューゲッセンはこれに対して、良好は関係は文書によって高められるものではなく、現在の状況にはそぐわないと述べて慎重な姿勢を見せた。宋美齢もこれに同意し、それ以上は何も求めなかったという。しかし、ナッチブル・ヒューゲッセンがこれを、中国がより緊密な協力関係を願っているという明確なメッセージとして受け取るには十分であった。ナッチブル・ヒューゲッセンは、中国側から「協力」という言葉が何度も出てきたと述べている。

このような中国側の意思表示の背景をナッチブル・ヒューゲッセンは次のように推察している。

I think it is partly prompted by uneasiness at reports of Anglo-Japanese conversations though I do not think that Chiang Kai-shek is seriously perturbed except possibly by the thought that he is being left out. It also proves a decision to pursue a policy of greater reliance on H.M. Government.

私が思うに、彼らの「協力」の望みは、部分的には日英対話の報道に不安を抱いたことに促されたものであろう。だが、私は蒋介石がそれほど深刻に不安を抱いているとは思わない。彼が除外されているのではないかという懸念を除けば。また、彼らの「協力」の要請は、英国政府を大いに頼る政策を採用しようという決意の証でもある。

もちろん、この頃の蒋介石の後ろには、米国、ソ連からの支援もあり、英国だけが頼みというわけではなかったが、英国にここまで思わせた話術はさすがである。宋美齢の役割はまさにそこにあったわけだ。

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