蒋介石が英国に要請した軍事協力

Letter to Donald p5 日英関係
Letter to Donald p5
Letter to Donald p6
Knatchbull-Hugessen’s letter to W.H. Donald, p.6.

1937年5月に行われた英大使との会談で、蒋介石は英国に経済協力と軍事協力を要請したのだが、今回は軍事協力についてもう少し触れてみたい。ナッチブル・ヒューゲッセン英大使が蒋介石の顧問ウィリアム・ドナルドに書簡を送っていたことは以前に述べたが、その書簡の最後の二段落を見ていこうと思う。

その中で、ナッチブル・ヒューゲッセンはこのように述べている。

With regard to “military co-operation” (I use the Generalissimo’s term in a limited sense and for the sake of brevity) I can tell you now that if the Chinese Government put forward a request for Britain advisers it will be carefully considered.

「軍事協力」(この言葉遣いは総統が用いたものとして、話を早くするために用いるものである)に関して、現在言えることは、中国政府が英国に要請してくるならば、それは注意深く考慮されるであろう、ということである。

慎重な言い回しではあるが、無下に断っているわけではない。正式に要請してくることを勧めているようにも受け取れる。そして、次のように続く。

You will also remember my letter of April 10th regarding the Generalissimo’s enquiry on the subject of the loan of officers to devise fortifications near Canton and along the Yangtze. In that letter I stated that H.M. Government could not lend serving officers, but that if the Chinese Government wish temporarily to engage serving officers and will put forward definite proposals the matter will be considered with every desire to help. I added that we would await an official application through the Waichiaopu if the Generalissimo wished to proceed further with the matter. The Military Attaché and Air Attaché are available to discuss matters if the Chinese authorities so desire.

貴殿は4月10日の私の書簡を覚えておいでだろう。その中で私は、総統からの将校出向派遣に関する問い合わせに触れた。その目的は、広東付近と揚子江沿いに要塞を建築するということであったが、私はその書簡の中で、英国政府は現役将校を貸し出すことはできないが、もし中国政府が一時的にこの現役将校を雇用することを望み、具体的な提案を出してくるのであれば、それを支援したいという我々の願いとともに、考慮されるだろう。もし、総統がこの話を進めたいと望むのであれば、我々は中国外務省からの正式な申請を待っている、と私は付け加えた。中国当局が望むのであれば、わが陸軍駐在武官と空軍駐在武官はその問題を協議する用意がある。

英国大使がここまで述べたのであれば、これはもう英国は日本ではなく中国を選んだと見えなくもない。そして、蒋介石はさらに踏み込んで軍事協力を求めたようだ。書簡は次のように締め括られている。

I should explain that the instructions from the Foreign Office on which the preceding paragraph is based were received in reply to my telegram sent after your visit on May 4th, but before they received the telegram sent after my conversation of May 8th with General Chiang Kai-shek. In that conversation the Generalissimo rather enlarged the scope of his proposals regarding advisers (he mentioned advisers for naval construction and also additional air advisers). I am not yet in position to tell you H.M. Government’s reaction to these wider proposals as their reply has not yet reached me.

上の段落で述べた内容は英本国の外務省からの指示に基づいているが、それは5月4日に貴殿が訪問してきた後に送った電報に対する返答であり、それは、5月8日に蒋介石総統と会談した後に送った電報より以前のものであると、断っておきたい。その会談の中で、総統は軍事顧問団に関する提案の範囲を少し広げて話されていた。(総統は、海軍建設のための顧問団と追加の空軍顧問団について話していた。)これらの広げられた提案について、今のところ英国政府から返答が届いていないため、私はこれに答える立場にはない。

海軍に関しては、これはそんなに急にできるものではないので、あまり現実味を感じないが、陸軍と空軍の軍事支援に関しては、国民党軍の戦い方の変化を見る限り、やはり大きな影響があったのでないか。日英関係の破綻の原因は、日本にももちろんあるだろうが、英国にも同じことは言えるのである。蒋介石にしたら、むしろ、この分断を狙って当然であろう。

ただ、ここまでの話は英国外務省の内部の話である。英陸軍当局が対中軍事支援にどこまで積極的であったかは別の問題であろう。事実、英陸軍は1936年に東京の英国大使館附武官として親日家のピゴット少将を、英外務省の反対を押し切ってまで派遣し、何を言われようが、1939年まで東京に留めたのである。英国の軍当局の中には親日勢力がまだそれなりに残っていたように思われる。英軍当局は、親中国に傾いていって英外務省と必ずしも一致していたわけではないということは、注意すべき点ではある。

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