父と私 倉前盛通伝

父と私 倉前盛通伝

生誕百年記念連載『父と私 倉前盛通伝』8

倉前麻須美 著  第8回 かぐや姫 尼ヶ辻での最初の頃はまだ体力がなく、いつも寝たり起きたりしていましたが、母がかぐや姫の綺麗な絵本を買ってきてくれたのがとても嬉しく、それからは板の間の部屋で毎日飽きもせず座って絵本を眺めていました。板の間...
父と私 倉前盛通伝

生誕百年記念連載『父と私 倉前盛通伝』7

倉前麻須美 著  第7回 母との思い出 今回は、数少ない母との思い出をいくつかお話してみたいと思います。 尼ヶ辻で間借りしている家の、道を挟んだお向かいは魚屋さんでした。ある日、魚屋さんにご近所のおばさん達と一緒に母親がいるのを見つけ、私は...
父と私 倉前盛通伝

生誕百年記念連載『父と私 倉前盛通伝』6

倉前麻須美 著  第6回 健康体に 光の帯は、また、納戸の唐紙の隙間から真っすぐ私の方に来ました。そして、また同じ様に、私の真上でピタッと止まりました。私は、今度は初めから足を出したらその光の帯を取れると思っていたのですが、なんて単純なんで...
父と私 倉前盛通伝

生誕百年記念連載『父と私 倉前盛通伝』5

倉前麻須美 著  第5回 光の帯 幼い私は尼ヶ辻の家で不思議な体験もしました。少し長くなりますが、お付き合いください。 尼ヶ辻の間取りは板の間の隣が六畳の座敷、その隣が3畳の納戸、長い廊下、座敷の壁側にさび朱色の大黒柱がありました。その右横...
父と私 倉前盛通伝

生誕百年記念連載『父と私 倉前盛通伝』4

倉前麻須美 著  第4回 光の夢 二度も死にかけたことなど何も知らない私の記憶は、尼ヶ辻から始まります。昭和25年から26年の頃になるでしょうか。そこでみた忘れられない夢から、私の人生の記憶は始まる言ってもよいでしょう。その頃の私はいつも怖...
父と私 倉前盛通伝

生誕百年記念連載『父と私 倉前盛通伝』3

倉前麻須美 著  第3回 尼ヶ辻へ 尼ヶ辻では来客が多かったようです。なかでも、父が尊敬する大先生でいらっしゃいます影山正治先生と保田與重郎先生のお二方に、赤ん坊の私を抱っこして頂けたのがとても嬉しかったようで、これもまた何度聞かされたこと...
父と私 倉前盛通伝

生誕百年記念連載『父と私 倉前盛通伝』2

第2回 テレビ局での思い出 倉前麻須美 著    尼ヶ辻の時代の部屋の間取りは今でもありありと覚えています。階段を上がって右側の戸を開けると四畳半ほどの板の間で、卓袱台があり、奥に台所。水道がない為、バケツに水を汲んで二階まで運ぶ作業を繰り...
父と私 倉前盛通伝

生誕百年記念連載『父と私 倉前盛通伝』1

倉前麻須美 著    第1回 命の恩人 私に物心がついた頃、両親は奈良の尼ヶ辻というところで、戦争未亡人のお宅の二階を間借りしていました。幼児の頃の私は頭でっかち、典型的な幼児体型で、その階段を一人で上り終え框でほっと一息つくやいなや、あっ...