先日、大西洋での軍事演習を終えポーツマス港に戻って来ていた英空母「クイーン・エリザベス」を、22日、エリザベス女王が視察に訪れた。インド太平洋へ向けて出港する前に、乗員たちには特別な餞となったことだろう。ジョンソン首相も別途視察に訪れており、この最新鋭空母とそれを中核とする空母打撃群、そしてそのインド太平洋派遣に英国がどれほど力を注いでいるかがわかる。
そもそも、英国空母打撃群のインド太平洋への展開は、メッセージの発信が目的である。それは、まず、英国のグローバルプレーヤーとして復帰することへ意思表示、そして、海洋通商国家を中心に築いてきた自由経済を大陸国家の独裁政権から護る決意を示すこと。これに尽きるだろう。この大きな構想を持っていれば、英国がEUを離脱して大陸勢力から距離を置くことは自然な流れである。つまり、かつて大英帝国が繁栄を築いた海洋に乗り出すためには、先ず欧州大陸のくびきを解き、次に海洋国家の仲間である米国や日本、豪州、そしてインドなどと結んで海洋の自由を護る必要があるのだ。今回の派遣のこのメッセージを世界に知らしめることが目的と言っても過言でない。
このメッセンジャー的存在の空母「クイーン・エリザベス」をエリザベス女王が激励に訪れたことは、乗員の士気を高めるだけでなく、英国のメッセージを強調する意味でも格別の意味を持つ。現在の軍事力とは、実際に交戦し相手に打ち勝つことももちろん大事だが、それ以上に、メッセージ発信のために不可欠な存在となっている。別の言い方で、これを抑止力ともいう。
軍事力を「暴力装置」などと言って否定する幼稚な輩が日本にはまだ多く生き残っているが、軍事力の意味を理解できない幼稚な頭には、この「メッセージ」は読み取ることなどできまい。
このメッセージを載せて、空母「クイーン・エリザベス」はインド太平洋へ向けて出港した。
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